IFRS適用企業は広がるのか?
こんにちわ!白金の公認会計士Fです。
現在日本の上場会社で適用できる会計基準は、J-GAAP(日本基準)、US-GAAP(米国基準)、IFRS(国際財務報告基準)、JMIS(修正国際基準)の4基準があるわけですが、各企業がどの会計基準を選択するかは、様々な理由があります。
IFRSおよびJMIS以前はJ-GAAPまたはUS-GAAPしかなく、US-GAAP適用企業はSEC登録企業(登録を廃止した企業を含む)で、基準適用の明確な理由があったわけですが、IFRSおよびJMISが任意適用できるようになってからは、各企業ごとの事情で基準適用の判断を行うようになっています。
2016年11月21日現在、東証上場企業でIFRS適用企業は102社、適用を公表している企業は23社、合計で125社がIFRS適用企業(予定を含む)となります。東証上場企業数は3,529社なので社数としてはまだまだ少ない印象がありますが、時価総額でいうと約3割にも達するようで、時価総額が大きい主要企業は先行してIFRSに移行していることが読み取れます。
IFRSを適用している主要企業とはどんな業種なのか。
適用企業が多い業種は、医薬品、卸売業(商社)、電機機器、情報通信、サービスです。
適用業種、企業を眺めていると、外国人持株比率が高い企業、グローバルに展開している企業、M&Aに積極的な企業、研究開発型企業に集約されるのかなというのが見えてきます。
それらのほとんどの企業がIFRS適用の公式な理由としているのは、グループ企業の会計基準統一による連結経営管理の強化、財務情報の国際的比較可能性の向上としています。まあ、常識的な理由ですね。
連結経営や比較可能性の向上は確かに大きな理由でしょうが、IFRS導入支援や検討している企業と話をすると本音のところが見えてきます。
よく言われている日本基準とIFRSの企業業績に与える大きな違いとして、のれんと開発費の会計処理があります。
のれんについては日本基準では一定期間内に規則的に償却をしなければなりませんが、IFRSでは規則的償却は必要なく、代わりに毎期減損テストの実施が求められています。
また、開発費についても日本基準では費用処理しなければなりませんが、IFRSでは一定の要件を満たせば、資産計上できます。
M&Aに積極的な企業でののれんの会計処理や、システム開発、医薬品開発など研究開発型企業での開発費の会計処理の違いは業績に与えるインパクトが大きく、IFRS適用のインセンティブとして働いたことは想像に難くありません。
また、あまり表立っては言えないのでしょうが、業界のリーディングカンパニーだしIFRS適用でも先行しよう、同業他社が適用するようだし、SEC登録だと何かと大変なので登録廃止しようなどの理由もあるでしょう。
これらの理由から今後もある程度IFRSへの変更企業はでてくるでしょうが、そもそも事務負担が重くIFRSを適用するメリットがない企業も多く、強制適用にでもならない限り相当数の企業は日本基準のまま行くのではないでしょうか。
中途半端でメリットのないJMISを選択する企業は限られるでしょうし。