有価証券上場規程の一部改正について(東証)
こんにちわ!白金の公認会計士Fです。
昨年から議論されていました決算短信等の開示の簡素化について、2月10日東証から「決算短信・四半期決算短信の様式に関する自由度の向上のための有価証券上場規程の一部改正について」として公表されました。
過去のブログでも決算短信の簡素化について否定的な立場で触れていまして、懸念していましたが、その後パブリックコメントの募集をへて、公表された有価証券上場規程の一部改正は、当初案どおりとなったようです。
改正の内容は単純で、現在使用されている短信のサマリー情報の使用義務を撤廃するというものです。
この結果、決算概要の開示の仕方が自由になるわけですが、はたして4月以降の開示内容はどうなるのでしょうか。
今まで利用されていたサマリー情報は、同じ様式、項目となっており、企業間や前年との比較可能性という点における速報情報として優れたものと思っており、各社まちまち、あるいは毎回異なる形式の開示方法になると投資家にとっては非常に使いずらいものとなりかねないと懸念しています。
改正への批判的なパブリックコメントに対する東証の考え方には、「参考様式に基づいて作成・開示を行っていただくよう要請していく」としており、従来どおり様式を利用して決算発表を行っていくも考えられますが、あくまでも企業の自主性に任せることとなったため、開示内容が後退する可能性もあります。
また、今回の改正内容には入っていませんが、従来からの開示要請事項とされている財務諸表3表やセグメント情報の開示についても、金融審議会ディスクロージャーワーキング・グループからの提言に基づいて、速報性という名のもとに決算発表時の開示から外される可能性もあります。
いずれにしても、決算開示内容の後退が起こる可能性が否定できない現在の動きに対してはもっと声を上げてもいいのではないでしょうか。
ちなみにパブリックコメントの結果を見てみると、経済界・銀行業界・監査法人業界は簡素化に賛成、投資家・証券業界は簡素化に反対というスタンスです。
加えて、同日に「決算短信・四半期決算短信作成要領等」を改定・公表しています。
内容の詳細については作成要領を見ていただくとして主な改定内容は次のとおりです。
・サマリー情報使用撤廃に伴う所与の改定
・「監査手続の実施状況に関する表示」の削除し、「決算短信等には監査等が不要であることについて」の明確化
・「決算等の内容の分割開示について」の削除するとともに、分割開示について、新たに規定した「決算短信において記載を要請している事項」に統合
・「定性的情報の開示の充実に関する要請」の削除するとともに、新たに規定した「決算短信において記載を要請している事項」に統合
・決算短信(添付資料)に「一律に記載を要請している事項」の削除し、「決算短信(添付資料)の開示事項及び記載上の注意事項」として新たに規定
作成要領については、要請事項として従来の内容と実質的にほぼ同じであるといえますが、4月以降に本格化する3月本決算の決算発表に注目したいと思います。
追記:2017/2/14
「決算短信・四半期決算短信作成要領等」の改定にあわせて、「企業内容等の開示に関する内閣府令」等の一部改正が公布・施行されました。有価証券報告書等に記載されている「対処すべき課題」の項を「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」とし、経営方針や経営戦略等の内容について記載することとされました。