法人税減税で経済は復活するか!
こんにちわ!白金の公認会計士Fです。
アメリカトランプ大統領は経済政策の大きな柱の一つとしていた税制改革案の概要を発表し、法人税率を35%から15%へ大幅な引き上げを公表しました。
もともと日本とともにアメリカは法定実効税率が高くカリフォルニア州で40.75%と国際比較でも先進国の中では高税率で、企業の海外流出を招いたり、企業の競争力を阻害していると言われてきました。
日本では安倍政権発足前までは法定実効税率が30%台後半でしたが、成長戦略の一環として、法定実効税率の引き下げを行い、現在29.97%、平成30年度以降は29.74%にまで低下する見込みです。
ヨーロッパ各国の実効税率は、フランス33.3%、ドイツ29.79%、イギリス20.0%で、隣国中国は25%となっており、ようやくアメリカは日本とともに法人税制の面でヨーロッパ各国と肩を並べる水準にまで低下することになります。
これら日本やアメリカで進められている法人税減税は本当に経済成長に資するものとなるのでしょうか。
法人税減税による影響としては以下のようなものが考えられます。
・税率が低い国への企業拠点移転を防ぐ
・海外企業の自国への進出を促す
・利益増加分を設備投資、賃上げや配当に回せる
減税により一時的には法人税収は減少するものの、拠点の国内回帰や海外企業の進出により国内所得の増加や個人消費の増加に寄与し、結果として税収増につながると考えられています。
一方で法人税減税にはで懸念される問題もあります。
結果として税収増に寄与するとしても一時的に税収減となるため、代替財源の確保が必要となります。
代替財源としては、国債の発行、他の税の増税、課税ベースの拡大、歳出の削減などが考えられるのですが、国債の発行や歳出の削減は限界があり、やはり消費税など他の税目の増税か課税ベースの拡大が選択肢として上がってきます。
アベノミクスでの政策では消費税増税がありますが、すでに二度延期されていますし、社会保障財源として考えられているので、課税ベースの拡大がやはり議論の中心となるのでしょう。
トランプ政権は代替財源として国境調整税を考えていたようですが、輸入を中心とする小売業界などからの猛烈な反対により頓挫したようです。結局のところ選挙公約で掲げていた法人税減税は公表したものの代替財源の見通しが示されないままでは、巨額の財政赤字を抱えるアメリカの議会を納得させることはできないのではないでしょうか。
また法人税減税による影響で、税収の自然増も期待できるところですが、効果として表れるためには数年かかることになりますし、経済成長が図れなければ税収増につながらないという不安定要素があります。
拠点の移転はすぐにできるものではないですし、移転したからといってすぐに効果が出るわけでもありません。設備投資にしても効果が出るのに時間がかかりますし、個人消費にしても市場の拡大や新たな需要の創出がなければ効果は出てきません。
また、海外に拠点を移している企業はその国の実効税率だけで決めているわけではありません。進出国の市場の拡大が見込まれることや人件費などの生産コストが低いなど、税率以外の面が大きな理由となっています。
アメリカにしろ日本にしろ海外先進各国の実効税率と同じ水準にすることは意味はありますが、代替財源の確保ができなければ経済成長どころか国が破たんする危機に陥りかねないことを考えるべきだと思います。
付け加えるなら各国の市場が様々な面で魅力的でなければ、その国の経済は空洞化してしまうということだと思います。